エッセンシャル版
マイケルポーターの競争戦略
より
ZARAのバリューチェーンは端から端までコントロールされており、かつバリューチェーンに関わるすべてが競合他社と異なり、重要なトレードオフを行っている。
ZARAの成功をもたらしているのは一つの選択ではなく、多くの選択が組み合わさって相互に補強し合う。
一見、ZARAの選択の中には、コスト効率がよいとは思えないものもある。
- デザインチームは大所帯で、H&Mと比べると人員は2倍
- 競合他社と違って製品を自ら製造しており、しかもほとんどをアジアでなくヨーロッパで行う
- 店舗は街中の最も賃料の高いエリアにある
しかしすべてを一つのシステムとして見ると、全体を最適化するために、一部の分野であえて最適ではない選択を行っていることがわかる。
- デザイナーの役割は、トレンドを見つけ出し、真似ることだ。大物デザイナーに大枚払って新しいものをつくらせる代わりに、世界中にいる偵察員に、ショーやナイトクラブなどで最新のファッショントレンドを探らせる。社内のデザインチームは、人数が多いおかげで新作コレクションの創作を一月以内、既存コレクションの手直しなら二週間以内に完了できる。
- 自社工場で内製し、スペインにある集中形物流センターからヨーロッパ全域に散在する店舗に商品を24時間以内に届けるために、自前のトラック部隊を持っている。
- 洋服は値札をつけられハンガーにかかった状態で店舗に届けられる。この方法は輸送コストがかさむが、商品をそのまま売れる状態で届くため、店舗でアイロンをかける必要がない。
- 店舗は人通りの多い一等地にあるにもかかわらず、広々としている。だが週に2度届けられる新作は少しずつしか入ってこないため「いま買わないとチャンスを逃すという、明確なメッセージを発している。
- 次々と入ってくる新作、広告塔を兼ねた人目を引く店舗、少ない商品。これらが組み合わさって話題を呼ぶ。
- ZARAの顧客は類似点の顧客と比べてより頻繁に買い物をし、より多くの品を定価で購入する。
- 店舗の立地には他社より多くの金をかけるが、広告宣伝にはほとんどかけない。数々の選択を組み合わせることで、広告宣伝に多額のコストをかけなくても、顧客を熱狂させることができる。
ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)
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